鉄骨110番

梁貫通孔を多数設ける影響

Question

梁貫通補強を行う場合、在来の板貼りではなくフリードーナツ等の既製品を使用すると、梁貫通補強の制約が大幅に緩和され、既製品の制限事項を守りさえすればほぼ無数に梁貫通孔を配置できることになります。梁貫通孔を多数設けることは、構造的に問題ないのでしょうか。

Answer

認定を取得した梁貫通補強要領においては、そのまま適用すると、ご質問にもありますように、1スパンの中に適用範囲内で何箇所でも配置できることとなります。梁の貫通補強は、梁部材の端部降伏時において作用するせん断力に対し対応しています。事務所建築などで、大梁のウェブ貫通孔を規定のサイズで、規定のピッチで連続して配することがあります。天井内を空調のダクトとして利用する場合などは、その例となります。設計的には、梁貫通補強をそれぞれに行なうことはコスト、工程上無駄が大きいことより、断面欠損をカバーするウェブ板厚の調整を行い、ウェブ板厚を、2サイズ以上厚くするなどの手段が採用されます。
梁スパンの10分の一かつ梁成分の梁端部からの範囲には、梁貫通孔を設けないといった規定に対し、認定を取得した梁貫通孔補強工法によれば、その位置(塑性化ゾーン)にも、スリーブを設けることが可能といった要因を考慮し、スリーブ補強に認定工法を採用することがあると考えます。認定補強要領で梁のスパン内に規定を満足する最小ピッチで最大の個数の貫通孔を設けるといった手段を現実的に採用することは、コスト的にも厳しい結果となり、実務的には余り考えられない状況であると思われます。